家族性の免疫性再生不良性貧血
2023.11.06
井美 達也
再生不良性貧血(aplastic anemia)の発症機序は主に免疫性、先天性、そして薬剤や放射線による骨髄損傷に分けられ、実臨床で診断される再生不良性貧血の大部分は免疫性によるものです。しかし、成人発症であっても家族歴がある場合には、Fanconi貧血や先天性角化異常症といった先天的な遺伝子異常(胚細胞変異)による遺伝性骨髄不全症候群の可能性を鑑別し精査する必要があります。先天性と免疫性の鑑別は治療方針を決定する上で非常に重要です。
本研究では、家族内発症を認めた再生不良性貧血の6家系を対象に、免疫性再生不良性貧血と関連があるHLA遺伝子型(HLA-DRB1*15:01とHLA-B*40:02)とPNH型血球の有無、および先天性の遺伝子異常の有無について評価しました。その結果、5家系でHLA-DRB1*15:01、4家系でHLA-B*40:02が遺伝しており、さらに1家系では同じHLAアレルを欠失した血球が検出されました。10例中8例からはPNH型血球も認めました。一方で、先天性再生不良性貧血に関連する遺伝子異常は検出されませんでした。これらの結果から、家族性発症であっても免疫性の再生不良性貧血の可能性は十分にあり、HLA欠失血球やPNH型血球の有無を含めた徹底した精査が重要であると考えられました。