免疫性再生不良性貧血におけるHLAクラスIアレル欠失
2023.04.05
材木 義隆
再生不良性貧血(aplastic anemia)とは、様々な機序で骨髄の造血幹細胞が枯渇し、低形成骨髄と汎血球減少(白血球減少、貧血、血小板減少)を呈する症候群で、1888年にPaul Ehrlichによって最初に報告されました。当時からヘマトクリットにより赤血球を測定可能であったことから「貧血(anemia)」と名付けられましたが、実際には好中球や血小板も減少します。再生不良性貧血の病態は、放射線や薬物などによる直接的骨髄傷害、先天性(遺伝性)、免疫性に大別され、成人発症の後天性再生不良性貧血の多くは、T細胞による自己免疫性疾患であると考えられています。しかしその根拠は、免疫抑制療法により造血が回復するという臨床経験であり、自己抗原など免疫病態はほとんど解明されていませんでした。
6pLOHによるHLAハプロタイプ欠失血球の発見
2011年、当教室は、後天性再生不良性貧血の13%では、コピー数変化を伴わない6番染色体短腕のヘテロ接合性の喪失(copy neutral 6p loss of heterozygosity:CN-6pLOH)という後天的な染色体異常によって、片親由来のHLA遺伝子群をすべて欠失した血球が検出されることを世界に先駆けて報告しました(Katagiri T et al. Blood 2011)。CN-6pLOHでは、片親由来の6番染色体短腕の一部が欠失する代わりに、もう一方の親から受け継いだ6番染色体短腕が複製されるため、血液内科診療で実施されているG-badningやFISHなどでは、この異常を検出することはできません。本研究では、SNPアレイという手法を用いて、CN-6pLOHを同定しました。
HLA遺伝子内の体細胞変異による単独HLAクラスIアレル欠失の発見
Zaimoku et al. Blood 2017
HLAクラスIアレル欠失血球の臨床的意義の検討
Maruyama et al. Exp Hematol 2016; Hosokawa et al. Blood 2021; Zaimoku et al. Blood 2021