多発骨髄腫研究

多発骨髄腫研究

2022.11.29

高松 博幸

 新規薬剤やCAR-T療法などの新規免疫細胞療法の開発によって、多発性骨髄腫では微小残存病変(minimal residual disease: MRD)が陰性になる症例が著しく増加してきています。白血球100万個に1個の腫瘍細胞を検出できるような極めて高感度のMRD検出系で骨髄腫細胞が検出されない患者の一部は治癒(fuctional cure)に到達する可能性が世界的なホットトピックスとなっています。

 血液内科の多発性骨髄腫診療では2011年から最新のMRD検出法を取り入れています。リアルタイムPCR法に加えて、世界標準である次世代シークエンサー(NGS)法(米国Adaptive Biotechnologies社)やマルチパラメーターフローサイトメトリー法(EuroFlow法)を用いた多発性骨髄腫のMRD評価に関する臨床研究を行い、これまでに複数の論文を発表してきました。特に、安価にNGSと同レベルでMRDを評価できるEuroFlow法を本学にスペイン・サラマンカ大学から導入し、保険診療が可能なように改変いたしました(全国で約2500件/年、実施)。現在、ルーチン検査として骨髄、末梢血、自家移植片のMRD検査をEuroFlow法で実施し、臨床研究を実施しています。また、10μlの血清でNGSと同等の感度・特異度でMRDを評価できる質量分析法の臨床導入にも取り組んでいます。

 画像診断では全身拡散強調MRIとPET/CT画像をルーチン検査として実施し、さらに本学の理工学研究域AI研究室(南保英孝准教授)との共同研究で画像のAI解析も実施し、高精度の予後予測がAIで可能であることも報告しています。